ダンスは私に、失った以上の力をくれました。
子どもから女性になる頃、ある恐ろしい瞬間に、
人間がいかに本当に醜く汚れているかを見て、
私の魂はとても失望し、挫折し、人も自分も信頼することが難しくなりました。
その時の私の人生を壊した言葉をまだ覚えています。
その後、荒れた時期を過ごしましたが、
躓きつつなんとかやり過ごし、生き抜きました。
被害者にはならないように、サバイバーになるために、
とんでもなく幸せになることが復讐だと思い、
ダンスを始めたのもその一環でした。
お稽古に通い始めてほどなく、幸せになって見返す、というような話をしたとき、
先生に
「もう今の時点で見返す必要はないよ。あなたのせいではないんだから、自分のために踊ってね。
あなたの大切な身体はあなたのもの、愛でてあげてね」
と言われました。
否定もされず、疑われもせず、
もしかするとこの先生のお稽古が、
私が奪われた(と感じた)自分の力、
失った(と感じた)自分の価値を取り戻すチャンスなのじゃないか?
と感じました。
自分の身体を所有してコントロールする感覚を持つ
お稽古を重ねると、本来私が持っていたはずの自己の感覚がだんだん戻ってきました。
しかし良い事ばかりではなく、辛く苦しい数カ月も過ごしました。
今なら、それは私が回復していくためのプロセスだとわかりますが、
予測がつかない発作などで「こんな複雑な生徒は大変なはず」と
ダンスを諦めそうになったことが何度かありました。
そんな私を心配して、先生は、
私自身が自分を諦めそうになっても諦めず、
前に前に目を向けるよう、心をかけて寄り添ってくださいました。
そして私もまた、信じる、ということが少しづつできるようになりました。
発作が起きると、恐怖で身がすくみ、呼吸が止まります。
ストレッチと呼吸法での対応を教えていただき、
今は発作の回数も減って、うまくやり過ごすことができています。
身体を使って踊ることにより、身体に向き合うことになり、
ダンスは私に、失った以上の力をくれました。
もう、復讐だとか、起こったことより、
先生に見守られながら、
音に溶けて踊ること、生きること、愛することを怖がらず楽しみたいと思います。
ー 40代 女性